韓国で在庫が底をつきそうになって話題になっているAdBlueⓇですが、皆さんご存じでしたか? 日本でもガソリンスタンド等でよく見かけますが、中身は高品位尿素水と呼ばれる無味、無臭の液体です。AdBlueⓇという名称は、ドイツ自動車工業会(VDA)の登録商標で、ヨーロッパや日本で浸透しています。それ以外の地域では、DEF(ディーゼル・エキゾースト・フルード)と呼ばれることが多いようです。この高品位尿素水がトラック等に必要となる理由は、尿素SCRシステムと呼ばれる排気ガス浄化システムを稼働させるために必要だからです。

日本では1999年に石原都知事が黒い粒子状物質が入ったペットボトルを見せた記者会見が印象的でしたが、バスやトラックなどの大型車で使われることの多いディーゼルエンジンの排気ガスには、PM(粒子状物質)とNOx(窒素酸化物)が多く含まれています。PMは燃料を高温で効率よく燃焼させることで減少するのですが、そうするとNOxが増えてしまい、この両者は“イタチごっこ”のような関係にありました。それを解決したのが尿素SCRシステムです。一つ目の酸化触媒でCO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)が低減された排気ガスに高品位尿素水を噴射しSCR触媒を通過させることで、まずNOxが低減されます。さらに二つ目の酸化触媒でNH3(アンモニア)を浄化するというのが、一般的な尿素SCRシステムです。

韓国で高品位尿素水の在庫がなくなりそうになった理由は、そのほとんどを中国からの輸入に頼っていたからと言われています。中国でもコロナウイルスで落ち込んだ経済活動が再び活性化し、高品位尿素水の需要が高まったタイミングで、尿素生成の原料となる石炭や天然ガスが不足し、結果的に尿素生産量が減少し、輸出が止められたようです。日本では国内で十分な量の尿素が生産されており、供給に大きな問題が出ることはないと思われます。ただし現在石油を始めとしてエネルギー価格が軒並み上昇しているので、高品位尿素水の価格も上昇することが予測されます。

トランスウエブではAdBlueⓇを事前に購入し、各車両に充填しています。AdBlueⓇは無害で安全な製品のため、保管等に特別な資格も必要ありません。ただし保管温度によって保管可能期間が異なるため、ある程度の気配りは必要となってきます。それでも購入している理由は、大幅なコストダウンとなるからです。ただし最近卸元から値上げの打診がありました。また11月下旬から備え付けタンクを満タンにすることが出来なくなっています。期限は未定ですが、70%までしか補給してもらえません。経済活動復活特需が落ち着いて、ガソリン、軽油の価格も含め、早く落ち着いてくれることを願っています。